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演出 ごまのはえ より

「なぜ、今この時代に三人姉妹なのか?」

今回演出するにあたって一番重点をおいたのはヴェルシーニンの長いセリフです。彼は芝居の最初にモスクワからやって来る軍人で、三人姉妹の一人と不倫して、最後に去ってゆく役ですが、セリフがものすごく長い。文庫版で一ページ丸ごと彼のセリフの箇所もあるくらいです。
その内容は「今あるものを否定して、今ないものを熱望する」もので、哲学的な高尚なことを言いながら、実生活では自殺未遂を繰り返す嫁さんに振り回されている男です。かっこよく言うと「救いがたいロマン派」、ぶっちゃけて言うと「愚痴っぽいおじさん」なわけですが、堂々とめげずに喋り続けるところに共感を持ちました。空気を読むことに神経つかってる僕らとしては羨ましい人物ではないでしょうか。
そのセリフをよく呼んでみると、チエーホフの「次の時代」に対する思いが屈折した形で入りこんでいるように思います。三人姉妹はモスクワに行きたがるが、ヴェルシーニンが求める生活はモスクワにすらない。ひたすらに「次の時代」を熱望します。しかし彼は先にも言った通り現状に不満があるだけの男にも見える。彼の語る「次の時代」は、「今の時代」の陰を裏返して言ってるだけかもしれない。
ヴェルシーニンに未来を語らせることに観察者としてのチェーホフの凄さを感じます。本当の「次の時代」は人間の思惑や理想とはまったく違った形で到来するのではないか。チェーホフはそんな風に思っていたのではないか、と決めつけて演出してますので、お楽しみに。


2008.08.18. 04:55 | 記録・読み物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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